画期的お仕事マンガ『無能の鷹』に脱帽
鬱がどうにもならず、社会からドロップアウトして1年が経った。
やむを得なかったとはいえ、正直未だに傷ついている。
お仕事マンガ(及び映画・ドラマ・小説)は、長らく避けている。
「私だって働きたかったのに」がどんどん溢れて止まらなくなるからだ。
そんなさなか、はんざき朝未著のマンガ『無能の鷹』に出会った。
読了後、自らの社会人生活を振り返り、「何をあんなに頑張っていたのだろう」と思える様になった。
上司からのパワハラ・モラハラに耐えながら畑違いの仕事を大量にこなし、脳みそがブチ壊れてしまった「私の様な人」にこそ読んで欲しい。
あらすじ
就活で鶸田が出会ったのは、一目でわかる「デキる人」・鷹野ツメ子。
一方、鶸田は見るからに気弱そうだが、実はポテンシャルを秘めた人間だった。
同期入社を果たしたふたりは1年後、最強タッグを組む!
主人公の鷹野は、仕事がデキそうに見えて、びっくりするほど何もデキない。
何もデキないと見せかけて、実は特殊能力を隠し持っていた!的な展開もない。
というか、努力を全面的に放棄している。
もちろん、仕事に対する責任感も皆無。
この、「主人公が一切成長しない」という点が、お仕事マンガとして非常に画期的だと思う。
『無能の鷹』を読んでいて、心に浮かんだ言葉がある。
「人間ダメでも死なないが、" 自分はダメだ " という思いは簡単に人を殺す」
鷹野は絶望的にダメだが、いつも胸を張って堂々としている。
その姿は、(根拠のない)自信に満ちている。
会社で評価が低かろうと、直接嫌味を言われようと、誰にも必要とされず孤立しようと、ノーダメージ。
危険なのは、それら「周囲の声」が「自分で自分を責める気持ち」と繋がってしまう事なのだろう。
それさえクリアすれば潰れない、別にダメだって死にやしないのだ。
そういえば、このマンガに出てくる「俺は一目でデキるかデキないか分かる」とか抜かす営業部長、昔勤めていた証券会社に実際いた。
なんでも、「これまでのキャリアでたくさんの若手を見てきたから、すぐに本質を見抜ける」と言うのだ。
彼がかつて褒め讃えていた一期先輩のマッチョ(仮名)は、客の金1千万だまし取って逮捕された。
「お客さんの為を思って誰よりも頑張っているまともな奴」とか言ってたが、あれは何だったんだ。
今度会う事があったら、地獄の果てまで問い詰めたい。
<自分よりダメな人シリーズ>