戦慄!尿見せびらかし女
妊娠判定のため婦人科を訪れたその日、私はマスク内の熱気と鬱で、あり得ない程ぼーっとしていた。
まずは総合受付で用紙に必要事項を記入する。
病院は混雑していて、なかなか診察カードが出来ない。
正直、もうこの時点で帰りたかった。
横になって、仮眠を取りたかった。
やっとこさカードが出来上がると、ベテランと思しき看護師に病院の配置図を渡され、一気にまくし立てられる。
「ここで尿検査のカップを受け取って、ここのトイレで採尿して、ここに提出して、ここで血液検査を受けて、終わったらこことは別の受付に紙を戻して、ここで自分の番が呼ばれるのを待って、最後にここでお会計をして、引き続きうちの産婦人科に通院希望だったらここで予約をとって・・・」
とても脳の処理速度が追いつかない。
追加で何ターンか会話して、ようやく流れを把握した。
体がカラッカラに干からびているので、ひとまず病院内の自販機で水分補給をする。
カップを受け取り、なんとか規定量の尿を採取。
「提出は・・・3階か。」
カップ片手にトイレを出て、総合受付を横切る。
受付を待つ人に尿を見せびらかす。
カップ片手に上りのエスカレーターで3階に移動する。
下りのエスカレーターに乗る人に尿を見せびらかす。
カップを3階に提出しようとするも、看護師に「ここではなく1階だ」と指摘される。
3階の看護師、及び患者に尿を見せびらかす。
カップ片手に下りのエスカレーターで1階に戻る。
上りのエスカレーターに乗る人に尿を見せびらかす。
再度、総合受付を横切る。
再度、受付を待つ人に尿を見せびらかす。
検査室にカップを提出しようとするも、看護師に「ここではなくトイレ内だ」と指摘される。
その場に居合わせた2~3人に尿を見せびらかす。
トイレの奥に正しい提出場所を見つける。
本来、誰にも尿を見せびらかさないで済んだ事を知る。
ここまでしでかして、あまり凹んでいない自分に引く。