仮説の映画館で『精神0』を鑑賞した
『仮説の映画館』で、想田和弘監督の新作ドキュメンタリー映画『精神0』を鑑賞した。
本作は、同監督が12年前に発表した『精神』の続編にあたる。
5年程前にそちらも拝見したが、かなり衝撃的だった。
内容紹介
「正気」とは?「狂気」とは?
外来の精神科診療所「こらーる岡山」に集う様々な患者たち。
病気に苦しみ自殺未遂を繰り返す人もいれば、病気とつき合いながら、哲学や信仰、芸術を深めていく人もいる。
涙あり、笑いあり、母がいて、子がいて、孤独と出会いがある。
そこには社会の縮図が見える。
代表である山本昌知医師のモットーは、「病気ではなく人を看る」、「本人の話に耳を傾ける」、「人薬(ひとぐすり)」。
『精神』は診療所の世界をつぶさに観察。
「正気」と「狂気」の境界線を問い直すと同時に、心の傷はどうしたら癒されるのか、正面から問いかける。
想田監督の「観察映画」シリーズの1つで、ナレーション・説明・音楽が一切なく、全ての解釈を観客に委ねる形式をとっている。
よって鑑賞後、「人の心はどうなっているのだろう」「彼らはどこへ行きつくのだろう」と、大いに考えさせられた。
近い将来、自分がうつ病になるとは夢にも思っていなかった頃だ。
身の毛もよだつ様な実話を平然と話す人が出て来たり、正気だと思っていた人が後にそうでないと分かったり、いやそもそも正気って何だよと思ったり・・・なかなか混乱した。
『精神』のメインが診療所の患者さんだったのに対して、『精神0』のメインは山本先生とその妻・芳子さん。
前作鑑賞後、「山本先生がいなくなった後、この患者さん達はどうなってしまうんだろう」と心配になった。
今作ではまさにその「山本先生がいなくなった後」を描いている。
内容紹介
ベルリン国際映画祭をはじめ世界で絶賛された『精神』(08年)の主人公の一人である山本昌知医師が、82歳にして突然「引退」することになった。
山本のモットーは「病気ではなく人を看る」「本人の話に耳を傾ける」「人薬(ひとぐすり)」。
様々な生きにくさを抱えた人々が孤独を感じることなく地域で暮らしていける方法を長年模索し続けてきた。
彼を慕い、「生命線」のようにして生きてきた患者たちは戸惑いを隠せない。
引退した山本を待っていたのは妻・芳子さんと二人の新しい生活だった・・・。
精神医療に捧げた人生のその後を、深い慈しみと尊敬の念をもって描き出す。
一人の女性患者の言葉「先生がいなくなったら、私どうしたらいいか分からない」に胸が痛くなった。
私だって今の主治医がいなくなったら、どうしていいか分からない。
不安感が一気に押し寄せて、元の爆鬱状態に戻る可能性すらある。
治療期間が長くなると、医師と患者はそれだけ固い絆で結ばれるものなのだ。
徐々に明らかになる引退の真相。
先生が診療所を閉めるにあたって、何を考え、どう結論を出したのか、想像するだけでこみ上げてくるものがある。
劇中、先生が最後の診断で患者に送った言葉が忘れられない。
「あなたが、ここまでしてきた努力の量はものすごい。
生きるか死ぬかのレベルを耐えてきたんだ。
よく耐えてくれた。
だからこうやって出会えたんだ。
ありがとうございます本当に。」
そうなんだよ!
世間の偏見にさらされながら、ずっとずっと耐えてきたんだよ!
気づいてくれてありがとう!
ちなみに仮説の映画館とは、コロナの影響で厳しい状況に置かれているミニシアター関係者が一丸となって立ち上げた動画配信サービス(サービス終了日は今のところ未定)。
観客がネット上で支払う鑑賞料金は、通常の興行と同様、小劇場・配給会社・製作者にそれぞれ分配される。
すなわち、このサービスを利用する事で、「映画の経済」を微力ながら回す事が出来るのだ。
画期的!もう給付金全部ブチ込みたい!