呪いのプリザーブドフラワー
入籍日当日、母から花が届いてゾッとした。
まるでこちらを見張っている様な威圧感があった。
「私の事、片時も忘れるんじゃないわよ」と。
こちら生花に特殊加工を施した「プリザーブドフラワー」と言われるもので、手入れしなくても2~3年もつというからタチが悪い。
見る度に吐き気を催す事必至だったので、押し入れの奥にしまい込んだ。
メルカリに出す事も検討したが、怨念がこもった商品を人様に押し付けるのはいかがなものかと思い、断念した。
一方同じ日、姑からも花が届いていた。
美しい生花で、私達夫婦の門出を優しく見守ってくれている様だった。
とうに枯れてしまったけれど、あのぬくもりは今も心の中に残っている。
同じ花でもここまで違うものか。
あれから月日は流れ、衝撃の事実を知った。
あの呪いのプリザーブドフラワーが、母からの祝儀代わりだったらしい。
父がいくらか包んだから、「私は払わなくていいか」と判断し、花にしたらしい(ちなみにうちの両親は離婚している)。
なるほど、母は余計な出費をカットする為、1万円前後のプリザーブドフラワーでごまかしたのか。
納得、納得。
責められたら「そうやってお金の事ばっかり!」「せっかくうさばら氏の事を思って選んだのに悲しい!」と言って、私に罪悪感をかぶせればいいのだから楽なものだ。
そう言えばこんな様な事、今までたくさんあったなぁ。
記憶の断片を探ろうとして、嫌な気分になるだけだと気づき、やめた。