この安産祈願がすごい!
妊娠5ヶ月目の戌の日、我々夫婦は安産祈願を鬼子母神にて執り行う事にした。
なぜ鬼子母神かというと、証券営業時代の私の担当エリアが雑司ヶ谷であり、境内でよくサボっていたからである。
もし自分が子供を産む様な事があれば、絶対にここに来ようと10年前から決めていた。
当日は雨だった為、タクシーを手配した。
うさばら氏:鬼子母神までお願いします。
タクシー運転手:鬼子母神・・・
うさばら氏:雑司ヶ谷駅の近くなんですけど・・・
タクシー運転手:あぁ、はいはい。
車内でお布施の準備をする。
前もってやっておくべきなのは重々承知だが、極度の面倒くさがり屋のせいで、どうしても後回しにしてしまう。
ちなみに、お布施袋もタクシーに乗る直前にコンビニで買った。
三半規管が暴れる前になんとか準備を済ませ、頭を上げる。
ん?ここ曲がるんだ・・・
まぁ、行き方は色々あるだろうし・・・
若干の違和感を覚えつつも、口出しせずに見守る。
タクシー運転手にキツく当たる様な人間にはなりたくない。
どんどん逆方面に走っている様な・・・
もしや、遠回りされてる系?
心が少しピリつく。
私は性善説を信じている。
人を疑う様な事は極力したくないのだが・・・
うさばら氏:あの、こっちじゃないですか?
タクシー運転手:すいません、迷ってしまいましたぁ~!
清々しいまでの敗北宣言。
最初の"俺に任せろ感"は何だったのか?
仕方なく、後方座席から道案内をする。
旦那:ナビ見ればいいんじゃないですか?
タクシー運転手:いやぁ~・・・ナビの目的地が間違っていたようでぇ~・・・
ツッコミ所たっぷりだが、今は集合時間に到着する事が優先だ。
幸いこの辺りの道は熟知している。
うさばら氏:このまま、まっすぐ行って下さい。
タクシー運転手:工事中で行き止まりですぅ~
うさばら氏:じゃあ右折して、少し先の所で道を渡って下さい。
タクシー運転手:こっちも行き止まりですぅ~
うさばら氏:そしたら、そっちの奥に小道があると思うので、そこから抜けましょう。
タクシー運転手:行けないみたいですぅ~どうしましょう?
うさばら氏:歩いた方が早そうなので、ここで降ります!
雨の中を5分程走り、ようやく到着した頃には予定時刻を少し過ぎていた。
バタバタと靴を脱ぎ、本殿の中に入る。
諸々の手続きを終え、小部屋に通されると、ほどなくして祈祷が始まった。
本来ならばここで、神聖な空気に身を委ねたり、産まれてくる我が子に思いを馳せたりする所だが、なかなか集中出来ない。
どうしても先程のポンコツタクシー運転手の世界一可愛くない困り顔が頭に浮かぶのだ。
そうこうしている内に祈祷は終わった。
結局私は約20分間、ポンコツタクシー運転手の事を思っていた。
奴の願いが近い内に、何らかの形で叶いそうで腹立つなと思った。