アメショポイ捨て事件
あれは7年前、父が株でやらかし、とうとう実家を売りに出さなければならなくなった時分。
ペットのアメリカンショートヘアをどうしようかという話になった。
父、母・弟・私の二班に分かれ、それぞれ別々にマンションを借りて住む事になったのだが、検討している物件はどちらもペット禁止だった。
そこで母は、「アメショを誰かに譲っちゃおう！」と即決した。
熟考する素振りもなかった。
私としては、ペット可の物件を他に探すか、もしくは何とか飼える様に交渉するか･･･と思っていたのだが、既に母の中で結論は決まっていた様だ。
母のペットに対する心理的距離感はどこかおかしい。
そもそもうちのアメショは、母が「自分と同じ誕生日だから」と勝手に運命を感じ、勝手に買ってきたものなのだ。
はた目から見て、母は非常にアメショを可愛がっていた。
アメショも母に一番懐いていた。
それを、都合が悪くなったら簡単に手放そうとするなんて。
またいつか飼いたくなったら買えばいいしと。
母は個への執着がないのかもしれない。
地球上にアメショは幾多存在するが、うちで飼っているあの子は世界にたった一匹で、かけがえのない存在だという事がピンと来ないのだろう。
その後、弟が「あんなに可愛がっていたペットを、簡単に手放すなんてどうかしている」と母にブチ切れ、結果父が引き取る形で事態は終結した。
父はアメショを引き取ってからすっかり猫好きになり、幸せに暮らしている様だ。
父が住んでいるのは、ペット不可物件だけど、めでたしめでたし。
