クセの強い産業医の思い出
前の会社で、もの凄くクセの強い産業医と面談した事を、ふと思い出した。
すぐにうちの産業医を辞めてしまった為、接触したのは1回のみだったが、鮮明に記憶に残っている。
ひょろっとした猫背気味の中年男性で、大きな目が常にギロギロしていた。
不健康な寺島進といった所だろうか。
彼が正真正銘の医師であると理解するのに、時間を要するのは明白だった。
面談が始まるとまず、これまでの経緯や現在の病状について聞かれた。
その流れで、私の日常生活に質問が及んだ。
寺島:家にいる時は何してるの?テレビ観たり?
うさばら氏:テレビはほとんど観ないです。刺激が多くて疲れてしまうんです。その代わりラジオはよく聴きますね。深夜ラジオとか・・・
寺島:深夜ラジオって下ネタとかの?あんなの聴いてるの?
強めにイラっとした。
私が人生をかけて愛したカルチャーを「下ネタとかの?」で片づけやがって。
どうやら、彼の深夜ラジオのイメージは、「鶴光のオールナイトニッポン」で止まっているらしい。
会話は続く。
寺島:他には何かしてる?
うさばら氏:本もたまに読んでます。ジャンルはエッセイが多いです。頭に入りやすくて・・・
寺島:エッセイっていうと何だ、林真理子とか?
再び強めにイラっとした。
エッセイ=林真理子っていつの時代だ。
私アラサーだぞ?
林真理子のファンな訳ないだろ。
何だろう、さっきからずっと小馬鹿にされてる気がする。
そしてまだ、私は彼が医師だという事実を飲み込めていない。
さらに会話は続き、トークテーマは「復職」に。
寺島:復職はどう?イケそう?
うさばら氏:まだ体調が不安定なので、断言は出来ないですが、少しずつ慣らしていけばイケるかと思います。意欲もちゃんとあります。
寺島:復職した方がいいよ。会社なんて座ってりゃ給料貰えるんだから。楽なもんでしょ。
そのあまりにもな言いぐさに、不覚にも笑ってしまった。
もはや、強めにイラっとするのも忘れていた。
ぶっ飛んだ人って、たまにこっちを癒しにかかるから不思議だ。
結局最後まで彼が医師だという事実を飲み込めなかったが、あの面談は「いい思い出」のくくりで記憶に残っている。
終わりよければ全て良しってこういう事か?